死んでも消えないもの「わすれられないおくりもの」
こんにちは。
台風が過ぎ去り、ある程度予測できた災害でも、天災から逃れることは難しいのだなぁと自然の脅威に慄いているくるみです。
被害に遭われている方が一刻も早く穏やかな暮らしを取り戻せますように、心からお祈り申し上げます。
この夏、大好きだった伯母が亡くなりました。
母とは性格が合わず、年々すれ違う部分を多く感じているのですが、母の姉であるその伯母には共感できる部分が多く、親しみを感じていました。
子供がいなかった伯母は姪っ子甥っ子を自分の子供のように愛してくれました。
明るく、よく笑う彼女は、みんなに慕われ、彼女の周りにはいつも笑顔が溢れていました。
親しい人が亡くなったのが初めての私は、思い出してはメソメソして、想いを消化できずにいます。
思っていたより早かった別れを、とてもとても残念に思います。
もっと相談したいことがあったのに。
もっと話をしたかったのに。
もっと子供たちと会いにいけば良かった。
……
また、死ぬということについて、ふとした時に、考える時間が増えました。
これから、親もどんどん老いて、自分も家族も友達もだんだん老いて、死を経験することが増えていくでしょう。
考えたくはないけれどもしかしたら、万が一、生きている間に子供の死に直面することもあるかもしれません。
これから出会う死を、私は乗り越えていけるのだろうか…
そんな死にまつわる心のささくれを鎮めて欲しいときにも、絵本は助けになります。
身体がなくなっても残るもの
アナグマは何でも知っていました。もう自分が長く生きられないことも知っていました。ただ、後に残していく友達が悲しむことだけが気がかりでした。友達の楽しそうな姿を見て幸せな時間を過ごした夜、アナグマは夢を見ました。長いトンネルの中を走る夢。アナグマはとうとう死んでしまったのです。
今回は思いっきりネタバレになってしまいそうです。
(まっさらな気持ちで絵本を楽しみたい方はこの先はご遠慮ください。)
アナグマが心配した通り、友達は悲しみでいっぱいです。
悲しみのまま雪が覆い、冬を越え、春になって、みんなはアナグマとの思い出について少しずつ話し始めます。
アナグマはみんなにそれぞれ豊かに暮らせる知恵や工夫という宝物を残してくれました。
モグラにはハサミの使い方を。
カエルにはスケートの滑り方を。
キツネにはネクタイの結び方を。
ウサギにはパンの作り方を。
豊かに生きていける術を教えてくれたアナグマ。
暮らしの中でふとその豊かさを噛みしめるとき、みんなはアナグマを思い出すのでしょう。
教えてくれた場面、アナグマの言葉遣いや表情を思い出すとき、みんなの記憶の中でアナグマは生き続けています。
アナグマの身体はなくなっても、自由になったアナグマは生き続けているのです。
魂があるとかないとか、心と身体は分けられるとか分けられないとか、そのような議論には詳しくないのですが、このように考えると、誰かが死ぬとき、何も残らないということはまずありません。
一緒に過ごした人には思い出が残ります。どんなに小さな赤ちゃんであっても、お腹にいた時の思い出は残ります。
伯母のことを思っても、私の記憶にはまだ伯母の姿があります。
もちろん全てが記憶に残っているわけではありません。
残っているのは、言われて嬉しかった言葉や、大笑いした思い出、ソフトクリームを食べながら運転していた横顔、作ってくれたおにぎりの味、言い争いしたこと、少し嫌だったこと…など。
残っている記憶は、その時の私の心に響いた出来事が多いです。
おそらく、良い方にも悪い方にも大きく心を揺らしたことは記憶に残りやすいのだと思います。
ふと、私が死んで、みんなの心に残ることはどんなことだろうかと考えます。
それが嫌なことでなくて心が温まるような場面だったらいいな。
願わくば、アナグマのようにその人の人生を豊かにすることであったら…。
けれど…
子供達にはガミガミと怒る恐い顔、夫には家事をダメ出しする冷たい顔、母には心を開いていない不満そうな顔。
今のままではそんな記憶が残ってしまうのではないかと不安になりました。
楽しそうな友達を幸せそうに眺めるアナグマのように、穏やかな気持ちで人に優しくしたい、と改めて思います。
ひめは、アナグマが死んだとき、信じたくない気持ちからか、「これも夢なんでしょう?」と言っていました。
三途の川のように用いられているトンネルの夢の比喩がわからなかったのかもしれません。
もう少し、ゆっくり読み聞かせをした方がいいのかな。
私はアナグマが、トンネルの中で、動きにくくなった身体から自由になって走る場面が印象的でした。
老化であれ、病気であれ、うまく動かない身体から解放されるということが、死だとしたら、清々しいものなのかもしれません。
実際は、どんな感じでしょうね。
経験した人には聞けないですもんね。
もし、私が無事年老いて、自分で死期を予感するようになったら、その時にもう一度読みたい絵本です。きっと死が怖くなくなると思います。
そして、それまでにたくさんのものを周りの人にプレゼントしていたいです。
森の動物たちの絵も優しく、心に残る絵本です。皆さんも是非。