3つのたねに絵本の水を

日々思ったこと、子育てエピソードと共に、3人の子供たち(にーさん(中1)ひめ(小3)ちび(年中))に読み聞かせた絵本を1冊ずつ紹介しています。

"雪の降る町を"を熱唱していたKくん「からすたろう」

こんにちは。

おもちゃの電話を持って、「いまからもしもしするからしーっだよ」と真面目な顔してみんなに注意して回るちびに、笑ってしまうくるみです。

 

さて。

私が小学生2年生の頃、Kくんというクラスメイトがいました。

Kくんはいつでも鼻をほじっていて、ぼんやりしていて、勉強も体育もできず、みんなからあからさまに嫌われていました。

けれどもKくんは誰に何を言われてもわりと平気でいつもご機嫌に過ごしているように見えました。

 

私は、汚いのはイヤだなと思いながらも、Kくんのいつも明るく、言動が不思議で飽きないところが、全く嫌いではなく、むしろいろいろ話をしてみたいとさえ思っていました。

 

彼はよく「雪の降る町を」という歌を大きい声で歌っていて、知らない歌だったので、その姿は衝撃的でした。

この渋い感じの知らない歌を、雪の降らない季節にあまり雪が降らないこの町で1人熱唱するKくん。

 

そんなKくんを思い出し、その他自分に起きた今までのいろいろなことも思い出し、読み聞かせながら様々な感情が込み上げてきて泣きそうになった絵本が今日の絵本です。

 

からすの鳴きまねの読み聞かせは難しい!

1年生の時からクラスに馴染めず、1人ぼっちでいた小さな男の子。それでも毎日毎日休むことなくとぼとぼと学校にくる彼は、6年生になった時、1人の先生と出会います。そして、学芸会の日が来てその子はからすの鳴きまねを披露することに。誰もが馬鹿にしていたのですが…。人を尊重するとはどういうことなのか。それぞれの胸に問いかける絵本です。

 

当時、私の学校では、クラス全員の前で班長が班員を選び、選ばれない人だけ席に残っていく、という最悪な班決め方法がありました。(どうしてそんなことが許されたのだろう?)

小学生の頃の私はリーダーなどもやるタイプで(今では考えられない!)、よく班長にもなっていたのですが、Kくんを選んでいました。

ふざけたうるさい男子より一緒にいて楽だったし、他に危害を加えるタイプでは決してなかったからだと思います。

 

そんなある日、母に「〇〇ちゃん(私)がKくんを班に入れてくれて嬉しいと先生が褒めてたよ。なかなかできないことだよ!お母さん嬉しかった。偉いね」と、さも誇らしげに言われました。

その時の私は、何か違和感を感じながら「いや、Kくんって本当に面白いんだよ」と答えたと思います。

 

その時感じた違和感の1つは、母親の言い方はKくんを馬鹿にしている、ということでした。

これは後々までずっと長く私達母娘にはびこる価値観の相違で、この頃までは意識していなかったけれど、この辺りから母が人を評価の対象と見ていることへの私の反感は築かれていくのだな、と今となっては思います。

 

まあ、そんな母との関係は置いといて。

 

もう1つの違和感の原因は、ずっと純粋な気持ちで仲良くしようとしていると思っていたけれど、実際自分は偽善や仲良くしてやってるという高慢な考えや優越感や自己満足のためにKくんと仲良くしてるのではないかという疑問でした。

これも後々まで、私の心に影を落とす感情のように思います。

周りの人からどう思われるかという気持ちが強くなり、自分の純粋な好き嫌いに自信が持てなくなりました。(年齢的なものかもしれませんが)

 

それから、なんとなく、Kくんとも距離を置くようになりました。

母に、そのことでもう褒められたくなかったのです。

 

幼い私は、語彙もなく、客観的に自分を見れなかったので(今もだけど)、自分の感情を分析する術もありませんでした。

今から考えると、とうことです。

 

(母とは合わないけれど、それはもちろん私側にも問題があり、一生懸命育ててくれたことを感じ感謝しているので、母の育て方を糾弾するつもりはありません。

いじめに加担しなかったことを自慢したいわけでもないのです。正直、その後はわりと黒歴史で、上手く立ち回ることだけが全てといった人間関係も多く、傷つけた人もたくさんいるのを自覚しています…本当に未熟な自分が恥ずかしいです。)

 

ただ、偉そうなことを言っていいなら、異質な他者を許容する世の中になったらいいなと思います。

「異質な他者」とは、からすたろうやKくんが、周りと違うと馬鹿にしているのではなく、自分以外は家族でも誰でも他者であり、親しさとは関係なく自分とは違う異質な部分を持っている、という意味です。

つまり、自分以外の誰もが「異質な他者」になり得るということです。

(最近、菅野仁さんの「友だち幻想」という本を読んで、その影響も受けました。これ、本っ当におすすめですっ!!教育者や中高生、その保護者の方に是非読んでいただきたいです!)

 

嫌な相手とは分かり合えなくてもいい、表面的でもいい、誰かを傷つけないように上手く距離をとることを学び、実践することが本当に大事だと思います。

 

Kくん、今どうしてるかな…

からすたろう

からすたろう

 

 

友だち幻想 (ちくまプリマー新書)

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