3つのたねに絵本の水を

日々思ったこと、子育てエピソードと共に、3人の子供たち(にーさん(中1)ひめ(小3)ちび(年中))に読み聞かせた絵本を1冊ずつ紹介しています。

今ある幸せとここではないどこかへの憧れ「もみの木」

こんにちは。

にーさんはクリスマスプレゼントでボードゲームをもらったのですが、早速やりたくて、2人の妹を懸命に誘っています。

対象年齢8才以上のゲームは、いくらなんでも3才には無理じゃないか、と思うくるみです。

本人はやる気まんまんで参加していました。

 

さて。

子供が小さいので児童書コーナーに行くことが多く、自分が子供の頃に読んだ本と再会することも多いのですが、思い出すのは悲しい話ばかりです。

 

まだ自分では読めない頃に、よく読んでもらった「ひとりぼっちのこねこ」という絵本は、親と離れて土管の中で泣く子猫が主役の、いたたまれないお話だったと思います。

ラストも希望なく終わってしまった気が…。

読むたびに泣いていたそうです。

(もっと明るい本を買ってよ、お母さん!そしたらもっと楽観的で明るい子になったんじゃないか?なんて逆恨みしつつ(笑))

 

今日の絵本も寂しいラストにしんみりしてしまいますが、クリスマス飾りの片付けの合間にふと読みたくなる絵本です。

 

今ある幸せとここではないどこかへの憧れ

森の中で小さなもみの木は早く大きくなりたいと願っています。すずめからクリスマスの話を聞き、クリスマスツリーに憧れるもみの木でしたが…深い余韻を感じさせてくれる絵本です。

 

もみの木は、立派なクリスマスツリーになることを夢見ています。

けれど、クリスマスツリー用に切り倒されたら、もうあとは枯れていくだけ。

それを知らないもみの木はクリスマスに飾られて喜び、最高の幸せを感じ、自分がまた飾られる日がくると信じています。

現実は、願いも空しく薪にされてしまうのです。

 

多くの大人の読者は、きっと、もみの木の一生に人の一生を重ね合わせるのではないかと思います。

 

もみの木に風がささやきます。

いまは こんなに いいときなのに。

どうして おまえは きがつかないの?

 

今に満足せず、ここではないどこかを夢見るもみの木。

大きくなること。

飾られること。

そればかりを願い、見せかけの栄光に踊らされたようにも見えます。

 

その願いが叶って、命短いもみの木は幸せだったのでしょうか。

それとも、こんなことならクリスマスツリーなんかにならなければ良かったと思ったでしょうか。

 

もみの木の中で、最期までクリスマスの思い出は輝いています。

ひと時でもそのような輝いた時間を得た一生は幸せだとも言えます。

 

現状に幸せを感じること、日常の中の幸せを探すことはとても大切です。

 

一方で、未来を夢見ることも大切です。

 

この2つを共存させることは実は難しいことではないかと思うのです。

 

「現状に満足するな」というのは向上心を育てる決まり文句ですよね。未来を夢見て挑戦する気持ちも大切です。

けれど、ただただ憧れだけで未来に希望を求めると目の前の幸せを取りこぼしてしまう。

何事もバランスが大事です。

 

ひめは私に似て、涙もろいので、ラストに驚き、「え?これで終わっちゃうの?」と涙を浮かべていました。

そして、「この本、すきじゃない」と。

 

私はというと、この絵本、とても好きなのです。

儚さや一瞬の輝きというものに弱いのかもしれません。

 

そういえば!とアンデルセンの童話を思い出してみると…

「スズの兵隊」「人魚姫」「マッチ売りの少女」。

子供の頃に読んで鮮烈に覚えているものばかり。

燃やされる兵隊、泡になる人魚、凍え死ぬ少女。

もみの木と通ずるものがあります。

ひと時の幸せと引換えに命を失い、もみの木と同じく、苦しむのではなく、楽しかった思い出、輝いていた思い出を胸に消えていくのです。

 

子供ながらに、根拠のないハッピーエンドよりも、不運の中でも気持ち次第で温かい気持ちになれるということの方にリアリティを感じたのかもしれません。

 

いまは こんなに いいときなのに

これは日々育児でも感じることです。

気付いてるんだけど、時は容赦なくさらさらと流れていきます。

取りこぼさないように、今は今で精一杯幸せを掬いながら、よりよい明日を夢見れたら…

そんなことを考えさせられる絵本です。

 

表紙にもなっている光を浴びたもみの木のページも好きです。

みなさまもぜひ。

もみのき (アンデルセンのえほん)

もみのき (アンデルセンのえほん)