自分は自分。みんなに合わせなくてもいい「やっぱりおおかみ」
こんにちは。
4歳のお誕生日にカードゲームをもらったちびは、入っている説明書を「メッセージ」と呼びます。
ゲームのルールを確認しようとする私に「メッセージにはなんてかいてある?」 と聞いてきます。
小さな印刷物を前に、自分は今メッセージを手にしているんだ、と思ってほっこりしたくるみです。
さて。
以前にも触れたような気がしますが、幼稚園前の井戸端会議が苦手です。
嫌い、というわけではなく、うまくできないのです。
自分のこの返答は合っているのかという不安があり、いつももぞもぞしてしまいます。
けれど、断る勇気も話を切るテクニックもなく、話しかけられると単純に嬉しくもあり、場に流されてそのまま参加してしまうという、自己主張がうまくできない人間なのです。
一事が万事、何においても、「これはみんなどう思うかな?」「みんなはどうしているんだろう?」と世論調査をしたくなり、多数派だとわかるとほっとする私です。
日本では私のような方も多いのでしょうか。
国民性を表した沈没船のジョークがあります。
ご存じの方も多いかもしれません。
ある客船が沈没しそうになったとき、それぞれの国の人にどのように声掛けしたら、自ら海上へ飛び込んでもらえるか、というものです。
アメリカの人には、「ヒーローになれます」
イギリスの人には、「紳士になれます」
ドイツの人には、「ルールで決められています」
イタリアの人には、「異性にもてます」
そして、日本人には、「みなさん、そうなさっています」
それを聞いてはじめは、自分はドイツ人に近いのでは、と思いました。
私はわりと真面目で、規則を守って行動するのが好きなのです。
が、よくよく考えてみると、周囲のみんなが破っている規則については、守る方に抵抗を感じます。
このジョークのドイツの人のようにはなれません。
「そうだよね、これ、きっちり守る方がおかしい…よね?」と思い、破ることに気持ち悪さを感じながらも破ります。
規則より、みんなの目。
私は典型的な日本人なのだな、と思ったジョークです。
今、大震災やコロナやいじめなどの人間関係…いろいろな脅威を前にして、この性質は恐いなぁと感じています。
自分が正しいと思ったことを口にしたり、自分の信じる道を行動することのできない弱さ。
少し疑問に思っても左右を見て揃えてしまうことの危うさ。
自粛生活やソーシャルディスタンスなどで、かつてないほど人との物理的距離が空いている今。
精神的な距離についても見つめ直す良い機会かもしれません。
ひとりでも生きていく
一匹だけ生き残ったオオカミは仲間を探して世界をさまよいます。仲間と暮らすウサギやヤギやブタを見て「け」と毒づくオオカミが、最後にたどり着いた場所は…?
シルエットのように描かれた黒い、一匹のおおかみ。
どこかに だれか いないかな
なかまが ほしいな
と仲間を探して歩きます。
でも うさぎなんか ごめんだ
仲間が欲しいおおかみですが、うさぎと仲間になるのは嫌なようです。
他の動物はみんな仲間と過ごしています。
窓からみんなで囲む温かい食卓が見えます。
け
と、おおかみは何度もつぶやきます。
墓場まで辿り着いたおおかみですが、そこでも仲間と過ごしているものがいて、孤独感が積もります。
みんな なかまが いるから いいな
誰もいないメリーゴーランドや高いところから見下ろした家々も、誰かが誰かと暮らしていることを連想させます。
私自身も、電車の窓から数えきれないほどの家々を見て、この中にはそれぞれ誰かが暮らしているんだなぁと、その果てしない人間の数を想像して呆然としたことがあります。
その中に1人も自分の仲間がいないと思ったら…
なんて圧倒的な孤独感。
おおかみがかわいそう、という気分になります。
ひめもおおかみを心配していました。
うさぎ狂のちびはもちろん、うさぎに反応します。
このうさぎさん達、穴が開いたような目が少し恐いのですが、ちびには関係ないようでした。
「うさぎさんいっぱい〜!」と喜んでいました。
さて。
おおかみは無事仲間を見つけられたのでしょうか?
それとも、このままおおかみは仲間を探し彷徨うのでしょうか?
それとも…?
ネタバレになるのではっきりは書きませんが、おおかみの辿り着いた心境に、清々しさをおぼえます。
みんなと同じと安心したい気持ちと、みんなとは違う部分を認めて欲しい気持ちとの矛盾に、日々悩まされている私たち。
誰かと全く同じ考えなんて、家族でもあり得ないのに、共感して欲しくて、共感してあげたくて。
どう思われているかばかり気にして、どうしたいかを見失っていて。
みんなと違っても、価値観が合わなくても、自分は自分として生きていく。
全員が同じ意見を持たなくても、それぞれがそれぞれに考えて生きていても、協力したり、助け合うことはできるはず。
仲間とは?
孤独とは?
自分とは?
考え出すと、なかなか深い絵本です。
自分は自分。自分としてより良く生きる。
勇気が出てくる1冊です。