3つのたねに絵本の水を

日々思ったこと、子育てエピソードと共に、3人の子供たち(にーさん(中1)ひめ(小3)ちび(年中))に読み聞かせた絵本を1冊ずつ紹介しています。

"くん"でも"ちゃん"でもなく、気品漂う「トマトさん」

こんにちは。

夢にイエモン吉井和哉さんとIKKOさんが出てきたくるみです。

思いもよらない人が登場する夢の不思議。

なんだか朝からねっとりです(笑)

 

さて、だんだんと暑くなってきましたね。

コロナで春をやり過ごし、恐る恐る外に出たら梅雨、という今年。

今年の梅雨は長いですが、早く梅雨明けして欲しい!とは思えません。

だって、梅雨が明けたら暑い暑い夏がくるから…

 

雨がじとじと、も困るけど暑いのも嫌い。

冷え性の私はクーラーも嫌い。

毎年、家族との設定温度バトルが繰り広げられます。

 

そんな暑い夏に、体の余計な熱をとってくれるおいしい夏野菜といえば、ゴーヤ、ピーマン、ナス!

これは私が大好きな野菜ですが、子ども達に人気がないので、なかなか買うこともできず…

 

我が家の子供たちに人気の野菜は、オクラ、トマト、キュウリ。

中でもトマトは、好みが違うわが子3人が揃って好む珍しいものです。

(でも夫が嫌い、というオチが…)

 

フルーツのようなたっぷりの甘い果汁。

独特の匂い。元気の出る色。

冷やして切るだけで美味しく、煮詰めればソースにもなる素敵な野菜、トマト。

 

今日はそんなトマトのお話です。

 

「くん」でも「ちゃん」でもない、気品漂うトマトさん

ある夏の昼下がり。真っ赤な完熟トマトのトマトさんが木から落ちました。とても暑い日でした。そばでは身軽なミニトマトたちの立てるころころぽっちゃんと涼しそうな川音。少し強がっていたトマトさんでしたが、暑くてたまらずとうとう泣き出してしまいました。夏のトマト畑の風景を描いたみずみずしい絵本です。

 

表紙を見て下さい。

ドアップで半開きの口。上を見る目線。なんとも言えない表情。

 

表紙を開けるとトマト色のページ。

「トマトさん」と書かれた文字の感じが私は好きで、もうそれだけで期待が高まります。

 

物語はトマトさんが木から落ちるところから始まります。

 トマトのきから どった、とおちた。

どった、といういかにも重そうな音からも、大きく実った赤く立派なトマトが想像されます。

 

落ちたトマトの表情。

トマトちゃんでも、トマトくんでもない、大人の女性の凛とした少しプライドの高そうな、トマトさんです。

 

そんなトマトさん、やっぱり少し強い性格なのか、やせがまんをします。

川に行かないかと尋ねるトカゲたちに「泳ぐのなんかみっともない」と言い放つのです。

でも真夏の太陽は容赦なく照り付け、トマトさんのほっぺを痛いほど焼きます。

 

とうとう トマトさんは、まぶたを しんなりと とじた。

 

しんなりと、瞼を閉じる。

さっきの「どった」という音と言い、表現が私のツボでした。

 

本当は泳ぎに行きたかったトマトさん。

体が重くて身動き取れないトマトさん。

体重を気にする女性のようにデリケートな女心を持っているようです。

 

「あまい においの なみだ」という表現に熟したトマトのすこし緑くさい甘い香りが連想されて、口がトマトを欲してしまいます。

美味しそうだなぁ。

 

ぶくぶく ぷっくり

とっぷん とっぷん

 

私はもうこの絵本の擬音語のとりこです。

 

子ども達は、トマトさんがごろんごろんと転がる様子や、トマトさんの表情に夢中になっていました。

転がる時の表情が本当にユニークで魅力的で、みなさんにも実際に見て欲しいです。

 

そして、最後の河原の涼やかで穏やかな様子に、夏の日の縁側やみんなで食べた棒アイスや、気だるそうにいつも団扇を仰いでいた祖母の姿を思い出しました。

涼を求める夏のひとコマを切り取った場面です。

 

ああ、夏がくるなぁ。

 

暑い暑いと言いながら、スイカやアイスをたべたり、扇風機に向かって「あー」と言ったり、お祭りのかき氷で真っ赤に染まる舌や花火の火薬の匂い、掻きむしった足。

夏の風景が一気に思い出され、愛おしい気持ちになります。

 

もうすぐ本格的に暑い夏がやってきます。

トマトさんの気品を感じながら、みずみずしい真っ赤なトマトをたくさん頂きたいです。

トマトさん (こどものとも絵本)

トマトさん (こどものとも絵本)

  • 作者:田中 清代
  • 発売日: 2006/07/15
  • メディア: 単行本