すべては知ることから始まる「ゾウの森とポテトチップス」
こんにちは。
12歳のにーさんが「俺はコミュ障だから」と冗談混じりに言った時に、不思議と嬉しくなってしまったくるみです。
客観的に評価できる時点で、かなり成長したということなのではないか、と嬉しくなったのでした。
話は変わり…
ポテトチップスはお好きですか?
甘い物や油の多い食べ物が苦手な私ですが、なぜだかポテトチップスは大好きです。
ビールのお供の中で1番と思っています。
そんな私は、出来立てを食べたくて家で何度もポテトチップス作りに挑戦しているのですが、油でヘナヘナになってしまったりして、市販の物のようにパリパリに揚げるのは難しいです。
以前、たまたま作り方を研究しているテレビ番組を見たのですが。
それによると、じゃがいもの種類を選ぶこと、水気をよく拭き取ること、油の温度を下げないように少量ずつ高温で揚げること、がコツとのことでした。
美味しいポテトチップスを作るのには大量の油がいるようです。
とういことは、1つのスーパーの棚に並んでいるポテトチップスを作るだけでもどのくらいの油が消費されているのでしょう…
野菜を素揚げした油だとしても、それなりの頻度で取り替えなければならないだろうし。
そして、その油は一体どこから手にいれているのか…
今日はそんなお話です。
これからはもっと大切に食べよう
東京から4000キロ離れた世界で3番目に大きな島・ボルネオ島。その島の熱帯雨林には様々な生き物が暮らしています。その熱帯雨林のゾウに会いに行って気付いたこと、知ったこと。すべては「知る」ことから始まるのです。
舞台はマレーシアのボルネオ島。
鮮やかな角を持った奇妙な鳥。鼻の長いテングザル。
子どもの興味を引くビジュアルを持った動物たち。
鮮やかな写真で見ることができます。
文章量はわりとしっかりあって、一見説明文のような感じです。
けれど、著者の「ゾウに会いたい」という素直な気持ちが綴られ、写真に沿った内容なので、写真を眺めながら4歳にも抵抗なく読めました。
体が大きい野生のゾウを見たい、という純粋な気持ちが子供心に寄り添います。
(読み聞かせでは「キナバタンガン川」に苦労しました。言いにくい!)
写真に写っているゾウは、動物園やイラストで見知ったゾウよりも少し薄汚い感じ。
まさに、野生のゾウ、という感じですね。
けれど、水浴びや泥で遊んでご機嫌そうな表情豊かなゾウの写真を見て、一気にゾウの好感度はアップ。
筆者も
体が大きく力のつよいゾウが、これほど表情が豊かで、とても愛らしい動物であることをはじめて知りました。
と書いています。
写真がとても上手いせいだと思うのですが、ほんとうにゾウの表情が豊かなのです。
そして、ゾウに愛着を持たせておいて、物語は核心に迫っていきます。
ゾウが命懸けで川を渡らなければならなくなったのはなぜか?
色鮮やかな個性ある動物たちの住む森が減っているのはなぜなのか?
それは、私たちの日常を支えるパーム油をつくるため。
大好きなポテトチップスのため(その他たくさんの日常を支える商品のため)なのです。
私たちの便利で豊かな日常のために、ボルネオ島の表情豊かな愛らしいゾウたちが命懸けで暮らさなければならなくなっている、という事実。
この絵本は、その事実を伝えてくれる写真絵本です。
ただ、この絵本の素晴らしいところは、深刻な社会問題を考える絵本なのに、取材時の体験を鮮明な写真によってリアルに伝えながらも、易しく恰好付けない言葉でわかりやすく語っていて、子どもにも非常に共感しやすいところだと思います。
説明色の強い内容なのに、子どもが付いていけるように工夫されている絵本だと思いました。
パームやしから油を作る工程も、ひめは興味津々で、楽しく読めました。
たくさんの生物、昆虫や鳥、植物、サルやゾウの写真も必見です。
最後のページにたくさん並ぶ生物。
そして、ぱたんと本を閉じると裏表紙に現れるポテトチップ。
多様な生物。
を、視界から排除して浮かび上がるポテトチップ。
このポテトチップスを食べるために、犠牲になっている多様な生物たちという構図。
ページをめくるだけで感じられる現実。
ポテトチップス。
そんなに価値があるものとして食べたことがあっただろうか。
すべては「知る」ことから始まる。
私が知ったことで、パーム油の消費量が変わるわけでもないけれど。
知ったところで、絶対食べないと宣言もできないのだけれど。
1つ知った。
ポテトチップスをむやみに食べない。
心して大切に食べる。ありがたく、食べる。
この豊かな生活を支えてくれているもの。
きっと他にもたくさんあるんだろうな…