3つのたねに絵本の水を

日々思ったこと、子育てエピソードと共に、3人の子供たち(にーさん(中1)ひめ(小3)ちび(年中))に読み聞かせた絵本を1冊ずつ紹介しています。

女性に長距離は無理!?「炎をきりさく風になって」

こんにちは。

バナナの皮を剥いて食べながら、「バナナさん、はだかんぼう」とぽつりと言ったちび。裸にされて噛りつかれるバナナが少し不憫に感じられたくるみです。

 

今日は国際女性デーだそうです。

 

ここのところ、ジェンダーの問題についての本を数冊読んで、考えることが多いです。

その大きなきっかけとなった本が「問題のだらけの女性たち」という本です。

この本は19世紀の女性たちが、いかにバカバカしい迷信と固定観念に苦しめられていたのかをイラストと言葉で皮肉に描いた本です。

読む本というより文字数も少なく大人の絵本という感じです。

ぱっと見ののポップさからは想像できない、衝撃的な内容の風刺です。

かつて世界には女性が存在していませんでした。

だから歴史の授業で女性の偉人について習わないのです。

男性は存在し、その多くが天才でした。

その後、女性が少しだけ誕生するようになりました。

でも、脳がとても小さかったので、刺繍とクロッケー以外のことは

なんにもうまくできませんでした。

 このような感じで女性への偏見、差別を淡々と語っていきます。

衝撃的なのは、ソクラテスなどの偉業を残したような人、科学を牽引したと思われる科学者までが、女性について、身体的欠陥があるように表現していること。

「そんな偏見があって、科学的な目で物を見られるものですか?」と問いたくなります!

 

皮肉たっぷりに書いてあり、「えーありえないでしょ。」と苦笑して突っ込んでいたのもつかの間、途中から全然笑えませんでした。

ふつふつと怒りがこみ上げてきます。これが現実世界で行われてきたのかと思うと…(怒)

 

読んでいると、「地動説なんかは、きっと察しのいい女性はとっくにわかっていたけど、男性の弾圧や暴力を恐れて口にしなかっただけなのではないか」などと根拠なく推測したり。

自分の虚栄心や闘争心を満たすために戦争するのも、だいたいは男たち。

人間の歴史は男性のせいで品位を失ったのではないか…とか思ったり。

かなりの男性不信になりました。(これはこれで偏った見方ですね…すみません)

 

思えば私は、男性と女性で、考え方や身体的能力が違うことに前から興味がありました。

昔、流行った「地図の読めない女、話の聞けない男」は、私は地図は結構読めるしなぁ、と思いながら読んだものの、「察しない男 説明しない女」はブンブンうなずきながら読むほど私たち夫婦のことを言い当てていました。

 

そして、黒田伊保子さんの「夫のトリセツ」「妻のトリセツ」を読んで、もっとお互いに歩み寄らないといけないな、と思ったり。

ジェレド・ダイアモンドさんの「人間の性はなぜ奇妙に進化したのか」を読んで、男性に対して失望したり。

 

何か腑に落ちないものがずっとあったのだと思います。

 

間違いなく、個人差レベルではなく男女の性質に差はあるのだと思います。

でも、それは優劣ではないはずです。話が長い、のも劣っているわけではないのです(笑)

世界は、性質の違う者同士が誰でも住みやすい社会を作ろうという方向にあります。

日本はどうでしょう?

 

「問題のだらけの女性たち」を読んで笑えなかったのは、たぶん、なんとなく屈辱感が現代の日本でも続いているからだと思うのです。

最近では東大入学式の上野千鶴子さんの祝辞や、ブロガーさんおすすめの韓国映画の原作「82年生まれ、キム・ジヨン」を読んで、やっぱり現在進行中だ、と改めて思ったり。

 

今日の絵本は、「マラソンは女性には無理」が当たり前だった時代の話です。

 

最近はにーさんは絵本読み聞かせに参加していませんが、男の子にこそ読んで欲しい1冊です。

 

身の回りの「マラソン」に目を向けて

ボビーは走ることが大好きだった。友だちがみんな走るのをやめても、走るなんて「女らしくない」と言われても走りつづけた‥今では毎年12000人以上の女性が参加するボストンマラソン。たった50年前には女性は参加することすらできなかった。その歴史の最初の一歩をふみだした、ボビー・ギブの物語です。

 

今日はネタバレ多めなので、新鮮な気持ちで絵本を読みたい方はこの先は読まないでください。

 

 

 

 

女性に長距離は無理です。

その昔、そう言われていました。

昔と言ってもたった50年前! 

周りに何と言われても、走るのことが好きで、諦めなかったボビーは、ボストンマラソンに男装をして挑みます。

両親にも反対されていたボビーは、当日父親にスタート地点に連れて行ってもらえず、絶望に打ちひしがれます。

その後…

「さあ、行くわよ」

お母さんだった。

この場面で私は涙が出そうになりました。

誰もが敵に回っても、味方になってくれる人の温かさに。

 

そして、ボビーは走ります。

 

走って熱くなったものの、変装に使っていたパーカを脱ぐとつまみ出されちゃうかも、とボビーが迷っていたとき、隣りのランナーの男性が言います。

「そんなことはさせないさ。誰が通ったっていいんだ、この道は」

そうなんです。 実際は敵ばかりではないのです。

偏見や思い込みで決めつけ、押さえつける人は一部の人で、個人レベルでみればわかってくれる人はたくさんいます。

女性の問題に限らず、マラソンの問題にも限らず、一歩踏み出せば多くの人に理解してもらえるものなのだ、そんな勇気をもらえます。

 

これがたった50年ほど前の話なのです…

LOVE2000を聴きながら踊るキュウちゃんや、自分で自分をほめてあげたい有森さんのインタビューをテレビで見て育った私には、衝撃的な話でした。

 

きっと身の周りにもまだ、たくさんのマラソンのようなものが存在します。

女性に対してだけでなく、虐げられたり無視されている権利はないのか、と問うきっかけになりそうな絵本です。